犬の尿路結石について
腎結石(腎盂の結石)、輸尿管結石、膀胱結石、尿道結石、尿管結石と呼ばれたり、
総称として尿石症、結石症と呼ばれることもあります。
結石そのものは同じでも、結石のできる部位によって、症状がかなり違ってきます。
ただし診断法や治療法、予防法にはそれほど大きな違いはありません。
痛みのせいで排尿姿勢をとっても尿が出にくいのが代表的な症状です。
また、尿路に細菌感染を併発し、頻尿や血尿の原因になる場合もあります。
尿が全く出なくなると尿路閉塞を起こすこともあり、
放置すると急性腎不全となり、早急に治療しないと命にかかわります。
このページの目次
尿に異常があったり尿が出ないときは
それは人間だけでなく、犬にも言えることですよね。飼い主様が愛犬の健康時の「尿の回数」や「色」などを普段からしっかり把握してれば、
変化が生じた際には、その異変にすぐに気付くことができます。
愛犬の尿の回数が増えたり、排尿の姿勢をするのにあまり出ないなどの場合は、
膀胱炎か尿路結石、前立腺の異常が疑われます。
結石があり、それが尿路をふさぐと、尿がほとんどあるいは全く出なくなり、犬は大変苦しみます。
その際は、すぐに動物病院に連れて行って治療を受けなければなりません。
尿が全く出なくなると、犬は2~3日間苦しんだ後に死亡します。
尿に血液が混じっていたり、尿がにごているなどの場合には、
膀胱炎、膀胱結石、急性フェラリア症、玉ねぎ中毒などが疑われます。
また、尿の回数や量が異常に多い時には、
慢性の腎不全、糖尿病、子宮蓄膿症(メス)、尿崩症などの病気が潜んでいる場合もあります。
腎結石
ふつうは病気がかなり進むまで症状が現れません。【症状】
結石は腎臓の片方に出来る時も、両方に出来る時もあります。
小さな結石だけでは特に目立つ症状は現れず、飼い主も気づかないことが多いようです。
そのため、別の病気のX線撮影などで偶然発見されることもあります。
しかし、尿路感染症を併発することが多いので、その症状が現れることがあります。
病気が進行すると、腎臓の中のネフロンが3分の2以上ダメになることもあり、
腎不全の症状が現れます。つづいて尿の中に微量の血が見られることもあります。
【原因】
結石ができるメカニズムは完全には分かっていません。
尿の中には代謝によって作られる様々な種類の物質(代謝産物)が
高い濃度で含まれています。
しかし、ふつうは尿路の粘膜が分泌する「保護コロイド」と呼ばれる物質が、
粘膜に傷をつけやすい異物などを包み込んで外に排出します。
そのため、これらの代謝産物が結晶化して結石になるのも妨げられています。
しかし、何らかの理由によって、コロイドが乱れると、結石が生じやすくなります。
実際に結石が作られるのは、尿の中に臓器の表皮など結晶の核となるものが含まれている時です。
とくに尿路感染症になると、こうした核になるものが尿の中に増えると考えられます。
また、細菌に感染すると、たいていはPHが上がってアルカリ性になります。
ほとんどの場合、結石はこのようなアルカリ性の尿の中で作られます。
しかし、尿が酸性の時に結石ができることもあります。
膀胱結石
膀胱結石は尿路結石の中で一番多くみられるもので、
ふつうは細菌性の膀胱炎(尿路感染症の一種)につづいて生じます。
そのため、尿路感染を起こしやすいメスに多く発症します。
ただしメスの結石の小さなものは流れ出ることが多く、
症状が現れるのは大きい石ができた時です。
【症状】
細菌性の膀胱炎と同じような症状が現れますが、膀胱炎よりも出血が多くみられます。
残尿感があって排尿の回数が多いので、血はふつう小さなかたまりの状態になっているか、
比較的きれいな色をしていることが多いようです。
血が尿の中に長時間ある場合には、
血液の成分が壊れて血色素(ヘモグロビン)が溶け出すため、
尿の色はコーヒー色もしくは紅茶色に変わります。
小型犬で結石が大きい時には、膀胱のあたりを触ると、固い石のようなものが感じられます。
【原因】
細菌の感染による膀胱炎が原因の一つと考えられます。
膀胱に炎症が起こると、膀胱の粘膜の上皮細胞などが剝がれたり、
炎症によって何らかの物質が作られたりします。
このとき、それらの物質が結晶化するための核になって結石が成長します。
【治療方法】
結石は手術によって取り出すのが原則ですが、結石が小さかったりして溶かしやすい時や、
全身の状態があまり良くないときは内科療法が取られます。
細菌に感染している場合には抗生物質を与えます。
結石の種類によりますが、原則的には薬で結石を溶かす治療を行います。
大きな結石は手術で取り除く場合もあります。
再発防止のために食事療法や抗生物質の投与も行われます。
尿道結石
オスによく見られ、尿が出にくくなります。【症状】
尿の出が悪くなり、
排尿の姿勢をとっても尿が出ない。
尿がぼたぼた落ちるようにしか出ない。
などの排尿障害があります。
しかし、それらの症状がとくに現れず、いきなり尿毒症を起こすこともあります。
他の病気でも尿が出にくくなることはありますが、
いずれも様子を見ていては手遅れになる可能性があるため、
尿が出にくい時にはすぐに診断・治療を受けることをお勧めします。
結石の大きさによっては、石が尿道につかえてもすぐに排泄されることがあります。
しかし、尿の出が元通りになっても、ほかの臓器に結石が残っていることがあります。
そのため、排尿障害が現れたときには、たとえその後すぐに症状が消えた場合でも
病気は治っていないこともありますので、獣医師の診断を受けましょう。
【原因】
尿道内で結石ができることはほとんどなく、
膀胱や肝臓から流れてきた石が狭い尿道に詰まるものです。
尿道の細いオスによく見られます。
尿が全く出なくなる尿路閉塞を起こすこともあり、その場合は緊急の治療を必要とします。